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【ARC’TERYX】ベータAR vs.マカイシェルジャケット/スタンドカラーのハードシェル比較

日本のアークテリクス公式サイトで入手できるハードシェルジャケットの中でスタンドカラーのものにベータARとマカイシェルジャケットがあります。どちらも甲乙つけがたいいいジャケットですが、今回二つを入手することができたので比較してみたいと思います。

マカイシェルジャケットとベータARの比較(ともにMサイズで比較)

【Beta AR】

アークテリクスから販売されている二つのスタンドカラーのシェルジャケット、ベータARとマカイシェルジャケットの大きな違いの一つとして、搭載されているゴアテックスの種類が違うということがあります。ベータARはゴアテックスの中でも最も耐久性や強度に優れた「プロ」シェル(Most Rugged)が使われているのに対して、マカイシェルジャケットは通常版のゴアテックスです。名前からして、「プロ」シェルの方が、通常版の上位互換ということは容易に察しがつきます。そう聞くと、ベータARのほうが高額になるような気がしますが、ところがどっこい、値段はマカイシェルジャケットのほうが2万円以上高かったりもします。マカイはベータARと比較すると結構重厚で手の込んだ作りとなっている分、値が張るのでしょう(多分)。ベータARに搭載のプロシェルは耐久性がずば抜けて高いそうですが、日常使いであればプロシェルである必要はあまりないかもしれません。ベータARは襟の部分がガッチリしていて、着用時の見た目は、どことなく「鎧」を着ているような印象がありますが、実際にはバリっとした生地感がある反面、軽くてペラペラな感じもします。これは重量を軽くすることで携行性や身体の活動性を損ねることなく、それでいてプロシェルによる最高級の保護をしっかりと担保する絶妙なバランスが組み込まれた設計なのだと思います。ベータARは基本的には40デニールのナイロンでできていますが、肩などの接触や擦れが多く発生する部分は80デニール生地で補強されています。そして、プロシェルを持っていることで、「物欲」や「所有欲」は満たしてくれそうです。なお、ベータARについては、活動時にゴアテックスプロ特有の衣擦れの音(シャカシャカ音)がするので、私は気になりませんが、気になる人もいるようです。


【Macai Shell Jacket】

一方のマカイシェルジャケットは、着用してみた印象はベータARよりも重厚でかつしっとりした着心地が感じられます。ジャケット全体は80デニールのナイロンでできていて、裏地にはフランネルという独特な質感の生地が採用されているのですが、これがジャケットの質感をかなり上げているように感じます。フランネル生地に微細な起毛が施されており、起毛といっても、いわゆるフリースジャケットのようなもこもことした感触のものではないのですが、個人的にはビロード生地に触っている感触にすこし近いような感覚を覚えます。着てみるとわかると思いますが、しっとりソフトな着心地が、柔らかく身体を包み込んでくれるような安心感を与えてくれます。起毛素材ということで、保温効果も少しは期待できそうです。アークテリクスのゴアテックス製のジャケットはどれも裏側の生地に施されたシームテープ処理が芸術的に美しいものがありますが、マカイシェルジャケットの裏側の微細な起毛のあるフランネル生地もすごくきれいに処理されていて、普段は見えない生地の裏側部分にもアークテリクスの職人技を感じることができます。なおマカイシェルジャケットもゴアテックス・ファミリーの一員なので、プロシェルのベータARほどではないにしてもシャカシャカ音は出ることはでます。

着丈の違い

【Beta AR】

ベータAR(Mサイズ)は着丈が割と短くできていますが、マカイシェルジャケット(Mサイズ)はベータARよりは着丈が長くできています。ベータARについては、おしり側の丈は長くなってはいますが、フロント側が短い仕上がりになっているため、特にMサイズの場合は着丈の長い中間着との相性はやや悪く、マカイシェルよりは、中間着を選ぶ感じになっています(Lサイズにサイズアップすればほとんどの中間着に対応可能です)。たとえば、同じアークテリクスのMサイズのアリウムジャケットは着丈が長くできているので、ベータAR(Mサイズ)との相性はあまり良いとは言えず、ベータARの下からアリウムの裾がはみ出してしまいます。一方、着丈の長いマカイの下からはみ出すこはないです。そのほかでは、ガンマMX(Mサイズ)とベータAR(M)はばっちり相性が良く、アトムLT(Lサイズ)の場合は、ベータAR(Mサイズ)と着丈が同じかややアトムのほうが長い感じです。

【Macai Shell Jacket】

…照明の関係であまりよくわからないですね(^^ゞ

襟の違い

【Beta AR】

襟(スタンドカラー)については、ベータARのほうがやや大きなつくりとなっています。襟に関して、それ以外にマカイシェルジャケットとベータARとの大きな違いとしては、ベータARはフードと襟が一体化して取り外せないのに対し、マカイはフードが取り外せるという点でしょう。マカイシェルジャケットはフードなしのスタンドカラージャケットになるという点は街着としてもいいかもしれません。また襟に対するフードを取り付ける位置・角度も二つのジャケットでは違いがあり、見た目の印象の違いにもつながっています。公式サイトの仕様説明を改めて拝見すると、マカイシェルジャケットの襟はインサレーションが入っているとあり、これにはまったく気がつきませんでした。というか、触った感じでは中綿素材がが入っているような感じはあまりしないのですが、もしかしたら、極めて薄いシート状のものが襟の中に入っているのかもしれません。もしそうだとしたら、さすがアークテリクスは芸が細かいですね。襟とフードとの関係についていえば、パット見た感じでは、マカイシェルのほうがフードと襟が一体化して見えるのではないかと思います。フードと襟が一体化したマカイシェルのシルエットはとても「美しい」仕上がりになっていると思います。一方、ベータARは使い込んでいくうちにフードの前側の付け根の部分がいい感じに捲れてきて、そこから後頭部側をくるりと囲むフードの線がなんとも絶妙な美しさを醸し出します。これがまたいいんですよね。同じスタンドカラーでもシルエットは異なりどちらも甲乙つけがたい良さがあります。

【Macai Shell Jacket】(フードを取り外した形状)

目的の違い

両者に想定されている使用目的ですが、マカイシェルジャケットは基本スキージャケットであるのに対して、ベータARはその名に「オールラウンド」とつけられているだけあって、日常使いから登山に至るまで汎用性が広く様々な用途に対応できる設定となっています。

マカイシェルジャケットにはスキーに特化した内ポケット群(ジャケット内側に、グローブやゴーグルを入れられる左右の大きなダンプポケット、その左側のダンプポケットにはジッパー付きのセキュリティポケットが付属しています)、それからパウダーガード、グローブをしたままでも開閉しやすい袖口の大きなベルクロ、左の上腕部のカードポケット、両胸外側についている小物入れポケットなどなど、ポケット群がかなり充実しています。もっとも両胸外側のポケット(ジッパー+固めのスナップボタン)はとても小さく開け閉めもしにくいので、前評判通り、実用的ではないように思います。しかしデザイン的にはカッコいいです。

ジャケットの左右両サイドにあるハンドレストためのポケットはベータARが20センチくらいなのに対して、マカイシェルのほうは24センチくらいありこちらのほうが大きい設定になっています。ベータARは外側のハンドレストポケットと左内側のジッパーポケットのみのシンプル構成です。パウダーガードについては、最近のスキー、スノボではあまり使用されることがないと聞いたことがありますが、実際のところはどうなんでしょうね。ビブパンツ着用すればパウダーガードは不要とか聞いたことがあります。両者ともに、「RECO」リフレクターという、もしもの遭難時用の信号発信機がジャケット内に埋め込まれています。

【Mmacai Shell Jacket】

黒色の発色

色はベータAR、マカイシェルジャケットともにブラックですが、両者を並べた時にベータARの方がより濃い感じの黒色をしています。一方、マカイシェルの方はやや青みが感じられる黒です。ラッシュジャケットもそうですが、ゴアテックスプロを搭載しているジャケットはより濃い黒の色合いが出せるのではないかと思います。これに対しプロ版ではない通常版ゴアテックスが搭載されているマカイシェルジャケットや、ベータ・インサレーテッドジャケットは、やや青みがある黒となっている印象です。まあ、単品で見れば両方とも黒ですけれど…。


※着用しているのがマカイシェルジャケットで、手前がベータAR

値段

ベータARとマカイシェルジャケットの値段(2024年12月時点)の比較ですが、ベータARは101,200円に対してマカイシェルは126,500円と2万5千円程度の開きがあります。ゴアテックス生地だけに注目すると、軽くて丈夫で耐久性抜群のゴアテックスプロを使ったベータARよりも、通常のゴアテックスを使ったマカイのほうが、高値というのはちょっと不思議な気がしますが、いたってシンプルな構造のベータARに対して、手の込んだ機能が充実して備わっているマカイにはアークテリクスならではのこだわりを強く感じることができる分、値が張るということなのかもしれません。「マカイ」と名のついたジャケットはダウン・ジャケットにもありますが、これもアークテリクスの様々なインサレーションジャケットの歴史の中で、長らくハイエンド商品として君臨していたので、この「マカイ」と名の付くジャケットには、アークテリクスの何か特別な思いが込められているのかもしれません。

【Beta AR】

マカイシェル・ジャケットとベータARジャケット、両者ともスタンドカラーがかっこよくてお気に入りのジャケットとなりました。日によって、気分によって、出かける目的によって、着用するジャケットを変えて冬の日を楽しんでいます。

【Macai Shell Jacket】

最後までお読みくださいましてありがとうございます☆

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